9.「個性」が生きるためには

 あの頃、「個性の尊重」がクローズアップされていました。「個性」を大切にすることは、その子自身がもっているものを伸ばしていくことにつながるのはもちろんであり、個性を尊重することの大切さは今も変わりません。その中で、わたしは、「個性を認め合える集団」を築くことこそが「一人ひとりの個性」を尊重することにつながるはずだと思っていました。それはあの頃も今も変わりません。

 ごくわずかな身近な友だち、家族や担任といった大人からだけに「個性」として認められているものでは、その「個性」を発揮する場がなかなか生まれてこないものです。発揮する場がなければ、その「個性」は本当の意味でその子にとっての「個性」として生きてこないですし、なかなか伸びてはいかないものだと思います。「個性」が「個性」として大切にされるためには、「個性」を認めてあげる集団づくりが必要不可欠だと思っています。

 自分の「個性」が認められ、その「個性」を発揮できる集団の中にいると、自然と周りの人の「個性」も認めてあげていく…。そして、一人一人が自分の「個性」を発揮できれば、集団もますます育っていくことができる…。
 理想のようでとても時間のかかることに思えます。簡単なことではありませんし、大人でも難しいことかもしれません。しかし、私はあなた方やこれまで出会った子どもたちにその姿を見せてもらい、教わってきました。

 当時、あなた方自身は、「個性」を認めてあげるとか認めてもらうとか、そんなことを意識していなかったと思いますが、5年生、6年生という心身ともに成長著しい中で、互いに認め合える集団へと育っていきました。そして、そういう集団の中で互いの心にゆとりが生まれ、「豊かな人間関係」も育まれていきました。
 成人し、社会の中でいろいろと悩みながら精一杯生きている今、あの頃の時間がとても尊いものだったと感じることができるのではないでしょうか…。
                                        つづく…

 

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