あなた方は顕微鏡の前に並び、何度も何度も交代しながら蚕の誕生の瞬間を観ていました。そして、「私も」「俺も」と、競争するかのように生まれたばかりの毛蚕(けご)に小さくちぎった桑の葉を与え始めました。
最初は気もち悪がっていた人の中にも、いつの間にか夢中になって顕微鏡をのぞき込んでいたり、桑の葉を与えたりしていました。それでも、まだまだ気もち悪くて近寄れない人もいました…。
生まれたばかりの1.5mmほどの小さな毛蚕が桑の葉を食べるとは思わなかったのですが、本能なのでしょう…、すぐに葉に上がってきたので、早速その様子も顕微鏡での観察が始まりました。
「すごい勢いで食べてる!」
と驚きの声。
肉眼では、動いているのはわかりましたが、食べている様子まではわかりませんでした。
顕微鏡で観ると、むしゃむしゃとしっかり食べていて、みんなで驚きました。
蚕が誕生したこの日は、一日中、誕生の様子や桑の葉を食べる様子を顕微鏡で観察している人たちもいて、授業どころではない…、ではなく…、なかなか経験できない特別で貴重な学習のチャンスであり、これからにつながる一日となりました。
「あっ もう糞がある」
「葉っぱに穴が開いているから あそこを食べたんだな…」
「おいしいのかなぁ」
「よく動くなぁ」
いろいろとつぶやきながらレンズをのぞいているあなた方の表情は見えませんでしたが、レンズから目を離し、体を起こして振り向いた時に見せるあなた方の表情は本当に生き生きとしていました。「子どもたちの目がキラキラしている」というのは、ああいう目のことなのだと、あの時あらためて実感しました。
あれから25年近くたっている今でも、あの日のあなた方の興奮している姿や教室の雰囲気を思い出すことができます。
つづく…
コメント