70.教室に届いた家族からの手紙

 通信を通して、私も新しい体験をさせていただきました。
 糸になって帰ってきた蚕は、康平の目には、ただただ美しい魔法の糸のような存在に映ったようで、最初はなかなか触らせて貰えませんでした。この間まで元気にうごめいていた蚕と、美しい糸に化けた蚕が、どのようにあの子の心の中で重なりを見せているのか興味深いものがあります。
 先日の全力投球(第63球)の中に「あの蚕の命をもらうのですから」という言葉を見つけ、心に浮かんだ知り合いの、その昔の経験があります。
 ある日、鶏をつぶし、料理をし、食するという課題があり、2つ目までは何とかこなしたものの気分が悪くなり、そのうえ可哀想でもあり、とうとう食べられなかった。その後に、あれは食いつくすべきだった。そうすることが鶏の命を全うさせることだったのではなかったのかと気付いたというものです。
 卵を孵し、大事に育てた蚕の生命を自らが奪い取るという貴重な体験をした子供達がこれからの暮らしの中にそれをどう取り込み、消化していくのかを楽しみに見守っていきたいと考えております。 康平の母より

 子供が学校から帰って来て、目をキラキラ輝かせながら、「お母さん出来たよ。」と言ったので、私が「何が出来たの…」と聞くと、「製糸工場から、まゆが糸になってきたんだ。」と言って、袋に入った絹糸を見せてくれました。とても嬉しそうでした。それから、「これ、何にしようか。」と私が聞くと、何も言いませんでした。しばらくそのままにしてあります。もう一度、シルク博物館にも行きたいとも言っていました。
 送ってきたまゆ玉に色がついているのがあったので、シルク博物館にもあったのを子供が気がついたようです。 建治の母より

 先日、製糸工場から届いた糸を持って帰ってきた時のことです。「ママ、いいもの見せてあげる。」そう言って、とってもうれしそうな顔で、袋から大切そうに出して見せてくれたのは、蚕の糸でした。細くて透き通っていて輝いて見えました。きれいでとても感動しました。こんなにきれいな糸になるなんて思っていなかったのです。
 きっと、今まで一生懸命育ててくれた子供たちへ、蚕からのごほうびなのかな?なんて思ってしまいました。うれしそうに、「宝物にするんだ!」と言っている子供を見ていて、とってもうれしくなりました。 彩華の母より

 5月12日、小さな砂の様な卵が学校にやってきた。2日後、卵から蚕が生まれ、その蚕が糸をはき、美しいまゆ玉を作る。その静かな仕事の中で、子どもたちは精力的に働きました。桑の葉とり、まぶし探し、情報収集、糸車調達、そして工場を見つけ、きれいな絹糸を手にしました。感動しました。この2か月間で、5年間分の知識と行動力を発揮できました。皆、やれば何でもできるんだね。 英貴の母より

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