76.多くの人々との関わりを通して学んでいくことは大事なこと

 蚕を育てて生糸を手にすることは、あなた方にとって目標ではありましたが、決して目的ではありませんでした。あなた方は「蚕」を育てることであったり、そのことに関して調べたり、桑の葉を集めたり、世話をしたりすることで、過程を大切に人との関わりを大切にしながら、主体的に行動できる力、豊かに表現できる力を深めていきました。この活動を通して、意義のある多様な体験をはじめ、心豊かな人との関わり、自然との関わり、生き物との関わりを持って欲しいと考えていたわたしにとっては、それが目的の一つでした。

 一つ一つの活動が充実してくれば、自ずとその活動の中に〝動きだす自分〟という存在が現われてきます。自分から活動に関わり始めれば、そこには友だちとの関わりが必ず生まれてくるものです。そして、より多くの関わりをもつことが、豊かな人間関係を生み出すきっかけにもなっていきます。
 私は、人が生きていく上で身につけておきたいこと、必要なことは、人との関わり方だと思っています。もちろん様々な見方、考え方はあると思います。当時、世の中で起きている重大な少年犯罪も、そこには人との関わりが持てないことが原因の一つにありました。いろいろな人がいて、いろいろな考えがあり、自分の周りにはそういう人たちがたくさんいることを、より多くの人々との関わりを通して学んでいくことはとても大事なことだと思っていました。

 蚕を育てているとき、放課後、友だちと誘い合って桑の葉を見つけに行った人たちも、教室で箱の中の蚕を一緒にのぞき込んで可愛がっていた人たちも、地域の方を訪ねて昔の話を聞いてきた人たちも、電話で話を聞いた人たちも、郵便局に繭を運んで行った人たちも、みんな知らず知らずのうちに人との関わりを深めていました。   
 
 今、あのころのことを思い返してみると、自然と力を合わせていた仲間がいたり、声にはしなかったかもしれませんが、仲間の行動を敬う気もちを持っていたり、いつの間にか一緒にやっていたり、自然と関わり合うことをしていたと思います。関わり合うことをいつの間にか楽しんでいた自分を思い出せる人もいるのではないでしょうか…。

                                       つづく…

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