封を開けると、中には5年2組の子どもたち宛ての手紙が入っていました。夏休み中に製糸工場を訪ねた5人がお届けしたクラス全員の手紙への温かいお返事でした。
書いてくださったのは、訪れた5人とわたしを懇切丁寧に案内してくださった小板橋さんでした。25年の月日が流れ、大人になった今、あの時の小板橋さんの手紙を読み返してみると、手紙を読んだあの時の嬉しさとはまた違った気もちを抱くことでしょう…。
栗木台小学校5年2組の皆さんこんにちは。
また、お手紙をたくさん書いていただきましてありがとうございました。
従業員の皆で楽しく読ませていただきました。
そして、先日、見学に松井田まで来てくれた先生をはじめ5人の元気な生徒の皆さん、遠いところたいへんご苦労様でした。
組合長さんは、全国の蚕糸関係のいろいろな役職についているので、東京や皆さんの住んでいる近くの横浜にたびたび出張したりしていまして、たいへん忙しいのですがいつか会える機会があれば良いですね。
先日は、5人の生徒の皆さんが熱心に見学して、いろいろと専門的な質問をするので、私たちは感心してしまいました。
最初から蚕を育てて、その蚕が繭をつくり、そして製糸工場で生糸になる工程を実際に自分の目で見る経験をしたことは、素晴らしいことだと思います。生徒の皆さんは製糸工場を見て、生糸になるまでの工程がわかった思います。
蚕さんに桑の葉を与え、愛情を注いで育てていくと、蚕さんは人間に繭という素晴らしいプレゼントをしてくれます。その繭からは、最高の繊維であるシルクのもとである生糸ができるのですから、なんて素晴らしい動物でしょう。
蚕さんがはいた糸は、人間の体にたいへん良いので、碓氷製糸工場で生産される一番良い生糸を使って、着物以外に下着や靴下やボディタオルを作ったりしています。今は化学繊維がいっぱい使われていて、着る物や食べ物の関係でアトピーになったりする人がたくさんいますが、お風呂に入った時、体を洗うタオルを碓氷製糸で作った絹のボディタオルで毎日洗っていると、肌がすべすべしてきてアトピーが治った人がたくさんいます。こんなにも、蚕さんが一生懸命につくった繭からとれる生糸は素晴らしいのです。
今度、碓氷製糸では、生まれたての赤ちゃんが着る産着というものを作り始めました。生まれたての赤ちゃんは肌が弱くてすぐかぶれたりしてしまいますので、肌に優しい生糸で作りました。そしたら、TBSテレビの日曜日の朝の「笑顔がいちばん」という番組の吉沢京子さんが取材に来て、この前全国放送されました。その放送を、全国にあるデパートの高島屋さんが見ていて、「是非私たちの高島屋で扱わせてください」という申し入れがありまして、近いうちに全国販売することになりました。これからはアトピーの赤ちゃんが少なくなればいいなと思っています。
見学の時に話しましたが。神奈川県でも蚕さんを飼っている農家が約40軒おりまして、年間で約10トンの生産量があり、すべて碓氷製糸に入ってきます。
蚕を飼っている所は、厚木、愛川、伊勢原、相模原、海老名、さがみ、津久井などの農家で、大事に飼育され、今年も4回運ばれてきました。今年はあと2回入ってくることになっています。
その他県外では、石川、愛知、岐阜、新潟、長野県からもたくさんの繭が大きなトラックで運ばれてきます。新潟では佐渡島でも蚕を飼っている人がいて、船で運んだ後、港からトラックにのせかえて次の日に入ってきます。また。石川県の能登半島の先のほうの珠洲(すず)市からも、10時間かけて運ばれてくるのです。
このように、全国ではまだいろいろな所で蚕が飼われていますが。国内の製糸工場は8工場になってしまいました。しかし、蚕さんを飼っている人がいる限り、70名の従業員が一生懸命頑張っていきたいと思っています。
神奈川県の皆さんが碓氷製糸を見学した記事が翌日の新聞に載りましたので、コピーをして同封しました。見てくださいね。選繭(せんけん・悪い繭を省く)作業の、悪い繭の見分け方について一生懸命に質問している生徒の皆さんが写っていますよ。
残暑も当分厳しいようですから健康に留意され、2学期も先生の授業をしっかり受けて、勉強も遊びも一生懸命して、有意義な2学期を過ごしてください。
碓氷製糸農協 小板橋
手紙を読んでみて、あなた方に携わってくださった大人の温かさ、あなた方の活動を支えてくださり、育ててくださった大人のすごさみたいなものを感じませんでしたか。
そして、大人である今、あなた方の周りにいる子どもたちとの関わりの中で、これからあなた方にできることを見つけたり、考えたりするきっかけになった人もいるのではないでしょうか。
つづく…
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