「はじめに」
きれいな真珠のような糸をはき、人間のために命を落としてしまう「虫」。
昔から、人々の生活を支え、富をもたらせてくれた「虫」。
「天」からさずかった「虫」。
その「虫」の名は『蚕』であり、『お蚕さま』とも呼ばれています。
皆さんは「蚕」という生き物を知っていましたか。実は、わたしたちの教室のほとんどの人も「蚕」のことをよく知りませんでした。「蚕」のことを知っていた人でも、「蚕」がわたしたち人間に、たくさんの贈りものをくれることは想像していませんでした。5年生の社会科の「稲作にはげむ人々」を学習している時、教科書に「蚕」のことがのっていました。そんな時、黒川に住むクラスの友だちの家でも、昔、養蚕をしていて、今は稲作に変わったということを知りました。そして、栗木台小学校の周りは、昔、川崎でも有数の養蚕地帯であったことを知りました。
わたしたちは、その事実にきょう味を持ち始め、自分たちで「蚕」を育てることに挑戦しようと決めました。育てるだけでなく、小学校周辺の地域の方々から昔の様子のお話を聞いたり、調べてみたりしようと考えました。そして、この活動は、学級の活動としてだけでなく、私たちの「総合的な学習」としてすすめていきました。一年にわたり、様々な課題を探究し、体験し、その学習活動をまとめたものがこの一冊の本です。
4回も繰り返される脱皮。服を着がえるたびに大きくなっていく「蚕」。
「蚕」が桑の葉を食べる音。その音は、まるで雨がふっているような音です。
糸をはいて、自分の体をかくしていく「蚕」。その姿をわたしたちはずっと見守りました。でも、それは「蚕」とのお別れでもあったのです。わたしたちの心の中には、初めて見る繭をつくる姿におどろき、感動している気もちと、悲しく、つらい気もちがわいていました。
わたしたちは、みんなで協力して桑の葉を集め、大切に育てていきました。最初は気持ち悪がっていた友達も、次第に蚕が可愛くなっていきました。毎日、蚕の成長を楽しみに学校に来ていました。「蚕」に愛情をもっていました。
わたしたちは、繭になった「蚕」を蚕蛾にするか糸をとるか真剣に話し合いました。2時間におよぶ話し合いの結果、糸をとり、その糸を大事にしてあげることが、「蚕」に喜んでもらえるだろうと考えました。それも、製糸工場で糸にしてもらうことを考えたのです。それからは、みんなで糸にしてくれるところを探しました。そして、群馬県の碓氷製糸農業共同組合を見つけ、自分たちで連絡をすると、組合長さんが快く引き受けてくださいました。すぐに繭を送ると、一週間後、わたしたちの手元に真珠のように輝く生糸が届いたのです。これが「蚕」がくれた最初の贈りものでした。この生糸を手にした私たちの感動の大きさが、この本のボリュームを表しています。この生糸を手にしてから、わたしたちは「蚕」に関する様々な課題を調べ、体験しました。そして、そのたびに「蚕」からの贈りものをもらってきました。今では、「蚕」からもらった宝物がいっぱいです。特に「感動」という心の贈りものをたくさんもらいました。その「感動」は一人一人ちがうと思いますが、みんなで分かち合い、友だちとの心の交流も豊かになりました。「蚕」は、5年2組の教室に「豊かな心」をプレゼントしてくれました。
この本をお読みになるみなさんも、読んでいるうちにきっと「蚕」を育てたくなると思います。そして、もっと調べたり、この本にのっている数々の体験がしたくなったり、この本に出てくる地域の方々や碓氷製糸農協の方々にお会いしたくなったりすると思います。
自分たちの学校の周りの昔のことを調べていると、とても楽しくなってきます。そして、自分たちの住んでいるところがもっと好きになってきます。ぜひ、みなさんも自分たちの住む地域に興味を持っていろいろと調べてみてください。そして、もし「蚕」を飼うことがあれば、わたしたちが一年間かけて活動してきた中から生まれたこの『蚕は友だち』を参考にしてください。
それでは、最後までゆっくりとお読みください。
栗木台小学校2000年度5年2組一同
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